ディジタル信号処理研究室

ディジタル信号処理研究室

研究室メンバー紹介
教員名 : 陶山健仁
大学院生:5名(M2:2名,M1:3名)
学部学生:11名(うち2部生2名)
研究室の概要
 本研究室ではディジタル信号処理(DSP: Digital Signal Processing)技術について,理論と実現の両面から研究をすすめています。DSP技術は,液晶テレビ,携帯電話といった情報家電はもちろんのこと,ロボットや産業機械制御,電力系統制御,波動計測,GPSなどの位置計測,医用工学,衛星通信システム,地震波等の波動解析および予測など,電気電子分野だけでなく多くの産業分野において必要不可欠な技術です。2011年からの地デジへの完全移行を例にとってもディジタル信号に対する処理技術の重要性の高さが容易に理解できると思います。

 海外の大学では信号処理に関する専門の学科が存在するぐらい,信号処理技術者が幅広く求められています。残念ながら日本ではそういった専門の学科はなかなかありませんので,ディジタル信号処理技術の需要の高さに比べ技術者は必ずしも充足しているわけではないようです。そういった背景のもと,本研究室ではディジタル信号処理の基盤技術であるディジタルフィルタ(digital filter)の設計手法・実現技術,近年注目されているセンサアレー信号処理技術の1つであるマイクロホンアレー(microphone array)による音響信号処理に関する最先端の研究を通じて信号処理技術者の育成を目指しています。

ディジタルフィルタの設計・実現
 ディジタルフィルタは,ディジタル信号処理技術の基盤技術の1つであり,もうこれでもか!というぐらいありとあらゆるところで利用されています。一番身近な例でいうと,測定した波に含まれるノイズをとってしまいましょうという目的で使用されています。最近のオシロスコープには波を美しく表示しようという機能が搭載されていますが,あれはディジタルフィルタが担当しています。テレビの映像や携帯電話の声などが綺麗なのはこの応用です。それ以外にも,波に含まれる特徴的な部分を抽出しようとか,周囲の状況に応じてロボットや機械の動きを制御する信号を作ろうとか,たくさんの信号が入り混じった状況で欲しい信号のみを抽出しようなど,その応用例も多岐にわたります。

ディジタルフィルタの設計

 ディジタルフィルタは離散時間回路の1つで,乗算器,加算器,遅延器(メモリ)の3つの要素で構成されます。ディジタルフィルタの設計とは,欲しい特性(所望特性)にうまく近似できるような乗算器の係数を決定する問題です。1つのフィルタにはたくさんの乗算器が入っていますので,その係数の組み合わせは無限にあります。せっかく設計するのですから,誰にも負けないくらいの一番良い特性を設計したいものです。本研究室では,最適化という方法を用いて,もうこれ以上良い特性はありません!という限界の特性を効率よく設計する方法を提案し,検討をすすめています。

   

ディジタルフィルタの実現

 ディジタルフィルタの実現には,ソフトウェア実現とハードウェア実現があります。ソフトウェアで実現する場合はパソコンを使ってもよいのですが,処理速度に限界があって必ずしもリアルタイムで動作させることができません。一方,DSP(Digital Signal Processor)と呼ばれる信号処理専用のプロセッサを用いると高速に処理することができるようになります。本研究室では,DSPを用いた信号処理システムの構築について検討をすすめています。
 ハードウェアで実現する場合は,ディジタル回路(演算回路)を設計するわけですが,搭載したいと思っているフィルタ係数を正直に使ってしまうと回路の規模が大きくなり,動作速度に制限が生じてしまいます。そこで,本研究室では回路規模を低減し,かつフィルタ特性は劣化させないという実現方法を提案するとともに,FPGAと呼ばれる書き換え可能なLSIに実装することにより,その有効性の検証を行なっています。

 

大学院生による最近の主な研究発表

  1. 尾崎裕一,陶山健仁:CSD係数をもつFIRフィルタ設計におけるスケーリング効果の検証,電子情報通信学会回路とシステム研究会,CAS2006-47,pp.31-36,2006
  2. 山崎崇之,陶山健仁:シンプレックス法の繰り返しによるIIRフィルタの複素チェビシェフ近似,第21回信号処理シンポジウム,D3-2,2006
マイクロホンアレーによる音響信号処理
 マイクロホンアレーはマイクロホンをたくさん並べた収音システムであり,近年注目されているセンサアレーの1つです。マイクをたくさん並べることで,マイク位置の違いによる空間的な信号処理が可能となります。具体的には,特定方向からやってくる音だけを受音したり,逆にある方向からの音を消去したりすることができます。また,受信音だけを用いて,まるで音を視ているかのように音源方向を調べるといったことも可能となります。この技術はロボット聴覚,テレビ会議システム,カーナビ等への音声入力,機器の故障診断などに応用されています。今後利用される分野の拡大が期待されている技術です。

 

高S/N受音技術

 マイクロホンアレーによる高S/N受音は,アレーの作る指向特性(空間的な感度特性)において目的音源方向にピーク,妨害音源方向にヌルを形成することによって行ないます。もともと人間は,金曜夜の新宿アルタ前や渋谷ハチ公前のようなやかましい状況においても特定の人の会話を聴き取る能力をもっています。このような能力はカクテルパーティー効果(cocktail party effect)と呼ばれ,人間のもつ優れた能力の1つとして知られています。本研究室では,人間をお手本として,このような高S/N受音機能の実現を目指し,適応信号処理や統計的信号処理を用いた手法を提案し,検討をすすめています。

音源定位技術

 音源定位とは,音のみを頼りに音源の位置(方向)を調べる技術であり,アレーの各マイクに到着する微妙な時間差を利用して音の方向を検出します。音がまっすぐアレーに到着してくれれば,そんなに難しい話ではないのですが,実際の部屋環境では,壁や天井からの反響の影響でいろんな方向から音がやってきてしまいます。また,空調の音や外を走る車の通過音などの影響で受信音がおかしくなってしまいます。本研究室では,そのような実際の環境を想定した音源定位技術について,性能改善法を提案しています。また,音源が移動した場合にも,うまく追従して追尾できるような手法について提案し,検討をすすめているところです。

   

大学院生による最近の主な研究発表

  1. 辻大亮,陶山健仁:移動音源環境下における逐次信号部分空間推定に基づく目的音抽出,電子情報通信学会応用音響研究会,EA2006-88,pp.43-48,2006
  2. 大井堂史昌,陶山健仁:3段階処理による実環境到来方向推定の改善,第21回信号処理シンポジウム,C6-3,2006
  3. 津村浩一,陶山健仁:マイクロホンアレーを用いた実環境における安定な移動話者追尾,第21回信号処理シンポジウム,C5-4,2006
  4. 辻大亮,陶山健仁:信号部分空間の逐次更新による移動話者追尾,第21回信号処理シンポジウム,C7-1,2006
  5. 大井堂史昌,陶山健仁:実環境における3段階処理による到来方向推定の改善,電子情報通信学会ソサイエティ大会,A-10-5,2006
  6. 大井堂史昌,陶山健仁:実環境におけるMUSIC法による到来方向推定の改善,電子情報通信学会応用音響研究会,EA2006-10, pp.11-16, 2006
  7. 津村浩一,陶山健仁:内点最小2乗アルゴリズムを用いた移動話者追尾,電子情報通信学会総合大会,A-10-9,2006